神社検定体験団 / 平成28年12月01日 「初穂曳に参加しました」体験レポート(第2回)
体験団員No.1 中尾千穂(扶桑社・皇室編集部)
伊勢の神宮で行われる神嘗祭(かんなめさい)を奉祝して、地元の神領民(しんりょうみん)が、全国から寄せられたその年の新穀を神宮の神域に曳き入れ、奉納する行事が「初穂曳」です。平成28年10月15日(土)、外宮(げくう)の初穂曳に、約100名の神社検定合格者が「特別神領民」として初参加。さらに約20名の壱級合格者が、同日夜に外宮で行われた「神嘗祭由貴夕大御饌」を奉拝しました。その貴重な体験をレポートします。
「エンヤ!」の声を合わせ、綱を上下にゆすって曳く
外宮までの道のりは、およそ1.2km。奉曳の長い列が、これからゆっくりと小1時間かけて進みます。時おり吹く風はひんやりしているものの、照りつける陽射しはまぶしく、暑いほど。誰かが「お祭り日和ですねえ」と言うのに、うなずき合う曳き手たち。片手を曳き綱にかけ、もう片方の拳を振り上げ、「エンヤ!」と声を出しながら奉曳します。とはいえ、大勢で曳いているためか、綱を曳くのに力はほとんどいらないようです。
ずっと後方に見える奉曳車の辺りから、メガホンを通して「エンヤ!」と煽るようなかけ声がリズミカルに聞こえてきます。2本の曳き綱の間には、威勢よく采を振る木遣子たち。綱の外側では、紺色の法被を着た「伊勢・むすびの会」の人たちが、「がんばって!」「もうちょっと寄って!」などと元気づけ、誘導してくれています。
外宮別宮(べつぐう)の月夜見宮(つきよみのみや)の前を通り過ぎると、沿道の見物人も数も増え、いくつものカメラがこちらに向けられます。そんなとき感じるちょっとした恥ずかしさは、「エンヤ!」と大きな声を出して振り払います。そのうち、声も自然に出るようになり、曳き手の息も合ってきたようです。
ここで、メガホンから「綱は上下に!」の指示が。綱を上下にゆすりながら曳く、伊勢伝統の(?)曳き方です。楽しいといえば楽しいのですが、太い曳き綱はずっしりと重く、慣れない曳き手たちはけっこう必死。日ごろ運動不足の人なら、筋肉痛は必至です。
奉曳車を神域に曳き込み、
五丈殿に初穂を奉納
やがて、伊勢市駅と外宮をつなぐ大通りに出る曲がり角へ。奉曳車が角にさしかかろうとすると、メガホンからは「曲がるぞ!」「止めるな!」の声。「ウワーン」と低く唸るような音を響かせて、奉曳車が角を曲がります。これは椀鳴り(わんなり)と呼ばれる車輪が軋む音で、よく鳴るのが良いとされています。
無事に角を曲がり終えると、しばしの休憩の後、再び出発。外宮はもう目の前です。地元のおばちゃんから「もう少しよ!」と励まされ、後方のメガホンからは「もう神様に近い場所ですから、もっと声を出して!」とハッパが飛んできます。
外宮の神域へ足を踏み入れると、曳き綱を高く掲げて進みます。木遣唄を合図に、奉曳車を神域に曳き込んで、無事にゴール。綱から離れるときには、名残惜しいような、ほっとしたような気分になりました。神社検定合格者チームからは、「神宮は2度目ですが、今回の初穂曳はまた違う感激があります」「綱を曳いて外宮に近づいたときには涙が出ました」「お祭りのにぎわいを感じながら曳けて楽しかったです」といった声が聞かれました。
さて、ここからはめいめいの手で新穀を神域内に奉納します。北御門参道で手水を取り、初穂の稲束を受け取りました。参道の鳥居の前で列を整え、鉢巻を外して、静かに神域を進みます。杜に包まれた神域は、さっきまでとは別天地の涼しさ。手にした黄金色の初穂は、陽だまりのような甘い香りを漂わせていて、ありがたく、いとおしくさえ思えます。
新穀を奉納する五丈殿(ごじょうでん)では、神宮や関係者の方たちが待ち受けていました。五丈殿は、雨天時のお祭りで神饌(しんせん)のお祓いなどが行われる建物。また、式年遷宮のお祭りで饗膳(きょうぜん)の儀が行われる建物でもあります。
五丈殿には、すでに一番車や二番車で奉納された初穂や米袋がうずたかく積まれています。私たちも順番に五丈殿へ進み、初穂を係の人に手渡して奉納しました。その後、五丈殿の敷地で神宮の神職の方から感謝状の授与があり、万歳三唱して解団式(かいだんしき)を行いました。
レポート:中尾千穂(扶桑社・皇室編集部)
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