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「初穂曳に参加しました」体験レポート(第1回) - 神社検定体験団

神社検定体験団 / 平成28年11月02日 「初穂曳に参加しました」体験レポート(第1回)

体験団員No.1 中尾千穂(扶桑社・皇室編集部)
伊勢の神宮で行われる神嘗祭(かんなめさい)を奉祝して、地元の神領民(しんりょうみん)が、全国から寄せられたその年の新穀を神宮の神域に曳き入れ、奉納する行事が「初穂曳(はつほびき)」です。平成28年10月15日(土)、外宮(げくう)の初穂曳に、約100名の神社検定合格者が「特別神領民」として初参加。さらに約20名の壱級合格者が、同日夜に外宮で行われた「神嘗祭由貴夕大御饌」を奉拝しました。その貴重な体験をレポートします。
 

初穂と米俵を満載した奉曳車
初穂と米俵を満載した奉曳車
そろいの法被姿で初穂曳へ
そろいの法被姿で初穂曳へ
参加者に配られる木札「伊」の一珠
参加者に配られる木札「伊」の一珠
「エンヤ!」の掛け声の練習
「エンヤ!」の掛け声の練習
「采」を手に木遣歌も威勢よく
「采」を手に木遣歌も威勢よく
綱を手に受け外宮に向け出発
綱を手に受け外宮に向け出発

 

 

秋晴れの当日。そろいの法被・鉢巻姿で初穂曳へ

待ちに待った初穂曳の日。朝から素晴らしい青空が広がりました。参加者は、内宮近くにある神宮会館に集合。受付をすませると、白いシャツとズボン、運動靴に着替えて、身支度を整えます。背中に「伊勢」の文字が躍るそろいの法被(はっぴ)を着て、日の丸が書かれた鉢巻を額にキリリとしめ、「御奉曳(ごほうえい)」と書かれた小さな木札を首にかければ、初穂曳スタイルが完成。そのいでたちに、お祭り気分が高まります。早くも記念撮影する参加者もちらほら。

午前9時半、バスに乗り込み、初穂曳のスタート地点へ向かいました。車中、神社検定事務局のスタッフから、「今回はおひとりでの参加者が多いようです。この機会に合格者同士、交流を深めていただければ」との言葉が。初対面といえども、そこは神社に並々ならぬ(?)興味を抱く人同好の士。しだいに車内におしゃべりの声が広がります。

 

奉曳車に新穀を積んで、

伝統の技術を継承

ほどなく、外宮の北にある尼辻交差点に到着。交差点の南約150メートルの道路上が初穂曳のスタート地点です。曳行(えいこう)ルートは車両通行止めになっていて、すでに大勢の法被姿の人たちが道路いっぱいに集まり、独特の節回しの唄声がにぎやかに響いています。

そんななか目を引くのは、初穂や米俵を満載した奉曳車(ほうえいしゃ)。大きな車輪のついた木製の台車で、「初穂曳」の幟(のぼり)と神宮を意味する「太一」(たいち)の木札・提灯を掲げ、注連縄(しめなわ)と榊で飾られています。奉曳車は、20年に一度行われる「神宮式年遷宮」の一環で、御用材を神域に奉曳するお木曳行事や、御正殿(ごしょうでん)の御敷地(みしきち)に敷き詰める白い石を奉曳するお白石持(おしらいしもち)行事で用いられます。第60回神宮式年遷宮を機に昭和47年に始められた初穂曳は、新穀を奉納して神恩に感謝する行事であるとともに、お木曳・お白石持行事の技術を伝承するための行事でもあるのです。ちなみに、初穂曳もお木曳・お白石持行事と同様、外宮へは陸曳(おかびき)、内宮(ないくう)へは川曳(かわびき)で新穀が奉納されています。

間隔を空けて停まっている3台の奉曳車のうち、先頭の一番車は地元・皇學館大学の学生や子どもたち、次の二番車は神宮お膝元の町衆である神領民が曳く車。しんがりの三番車が、その他の特別に奉曳を許された特別神領民が曳く車です。今回、各県神社庁などを経由して全国から集まった特別神領民約850名のうち、神社検定合格者チームは最も人数の多い団体だそう。

奉曳車の前方には2本の白い曳き綱がつながれており、曳き手は各綱の両側に分かれて4列で綱を曳きます。4つの列は、進行方向に向かって右から「伊」「勢」「神」「宮」と名づけられています。さて、自分はどの奉曳車の、どの位置で曳けばいいのでしょうか? それが一目でわかる目印が、団体ごとに配られ、めいめいが首にかけている木札なのです。神社検定合格者チームに配られた木札には、オレンジ色の紐がついていて、「伊」の文字が書かれ、木の珠(たま)が1つついています。紐の色は奉曳車を、文字は列を、珠の数は列の前後の位置を表します。つまり、この木札を見れば、三番車、「伊」列、一番前の綱先で曳く、ということがわかるのです。それぞれの位置には、係の人が列を表す文字と珠を染め抜いた幟(のぼり)を掲げているので、曳き手は該当する幟の前に並べばいいわけです。

 

「ヨーイトコ ヨーイトコセー」

木遣唄も威勢よく

こうしてスタンバイしている間も、辺りには独特の節回しの唄声が響いています。地元の人たちによる木遣唄(きやりうた)です。木の持ち手に白い和紙をつけた采(ざい)を手にした木遣子(きやりこ)が、かわるがわる自慢の喉を披露してくれます。

一人が「ホォーランエー めでためでたの ヤーエー」と唄えば、みんなで采を振り振り「ヤットコセー ヨーイヤナー」と合いの手。また先の一人が「めでためでたの 若松様は枝も栄える 葉も繁る ハー ヨーイトナー」と唄えば、みんなで「ソリャ ハーリワ アリャリャリャリャ ヨーイトコ ヨーイトコセー」と返します。

これは江戸時代、伊勢街道で唄われた伊勢音頭の歌詞に見られる「よいとこいせ」(良いとこ伊勢)に通じるものだとか。そのうち、「さあ、みなさんも合いの手をご一緒に」と促されました。歌詞カードを見ながら声を出していると、なんだか楽しくなってきます。さらには「これ、持ってみる?」と、木遣子が采を手渡してくれました。采を手にポーズをとって記念撮影すれば、気分はもう神領民です。

そうこうしているうちに、前方では二番車が出発。続いて三番車の出発式が始まりました。メガホンを手にした地元の実行委員会の方が、初穂曳の心得や注意事項を教えてくれます。「綱を曳くときには、『エンヤ!』のかけ声を出すこと。元気に楽しく曳きましょう!」ということで、しばしかけ声の練習。メガホンの「エンヤ!」の声に続いて、こちらも「エンヤ!」と声を出します。

次に、ぐるぐる巻きにした曳き綱を肩に担いだ係の人が、綱を延ばしながら前方へ移動してきました。整列している私たち曳き手は、自分のところまできた綱を手で受けます。曳き綱は神聖なもの。地面に落としたり、またいだりしてはならないのです。木遣唄が入り、一同拍手で式が終わると、いよいよ外宮をめざして出発進行!

レポート:中尾千穂(扶桑社・皇室編集部)

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